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友野一希連載【 #トモノのモノ語り。】vol.18「山本草太さん、島田高志郎さんと語る2022-23シーズン 」<フィギュアスケート男子>
フィギュアスケーター友野一希さんの人気連載に初ゲスト! 山本草太さん、島田高志郎さんを迎え、今シーズンの振り返りトーク! 世界選手権の話題から、やってみたいお互いのプログラムまで盛り沢山でお届け!
友野一希の「トモノのモノ語り。」
友野一希連載【 #トモノのモノ語り。】vol.17「山本草太さん、島田高志郎さんと語る、全日本選手権」<フィギュアスケート男子>
2023.05.09 更新日:2023.12.22
vol.17
山本草太さん、島田高志郎さんと語る、
全日本選手権
フィギュアスケーター友野一希さんの人気連載に初となるゲストが登場!
待望のゲストは、お名前部門で連載最多登場回数を誇る山本草太さんと、一緒に洋服を買いに行ったり、愛媛を旅行したりと仲よしっぷりが止まらない島田高志郎さんのお二人!
「トモノのモノ語り。」vol.3では、神保町をぶらり散歩しましたが、今回は3人でつかの間の東京での休日を楽しむべく浅草へ。街のランドマークを訪れながら今シーズンを振り返っていただきました。
今シーズンを振り返って
「みんなが草太くんに引っ張られたシーズンだった」
――まもなくシーズンの幕が閉じます。どのようなシーズンになりましたか?
友野 それぞれいいも悪いもどっちも出たシーズンだったよな?
島田 うん。これまで僕と草太くんって試合になると毎回ミスをしてしまうことが多くて。ちょうど2、3年前「僕たちまだまだ頑張らなあかんな」という話をしてたんだよね。
山本 そう。そこからやっと今シーズン頑張りたいところで頑張れるようになって。それがよかったと思う。
友野 それにしても怒涛の“山本シーズン”だった。前半から草太の勢いが止まらなくて。みんな「草太やべえ」って言ってた。
島田 みんなが草太くんに引っ張られたシーズンだった。僕が最初に衝撃を受けたのはNHK杯の選考会の時。あの時はコンディションもよくて自信満々で帰国したんだけど……いざ日本で草太くんと一緒に練習したら、ああ僕はまだまだだったなと痛感した。
友野 めっちゃへこんでたもん高志郎。「草太くんすごかったわ……」って。俺は既に合宿で見てたから、「やろ?」って(笑)。
シーズン始まる前のシニア合宿で一人だけ仕上がりがダンチなんやもん。その時から俺もスイッチが入って、あえて草太のことを口に出すようにしていたところもあった。だって必要以上に意識しなきゃこのまま置いて行かれそうな感じだったから。
島田 シーズンの始まりは一人だけすごかったよね。一番怖いと感じたのは、周囲のことは一切関係なしにずっと自分と一対一で向き合ってるように見えたこと。自分だけと戦ってる感じがあって、周りを結構見ちゃう僕からしたら、ほんとにすごいって思った。
友野 見向きもされてないって感じだった。自分で目標を設定して、それに向けて猛進してたし、本人から自信があふれてるように見えた。そうじゃない?
山本 先シーズンまでふるわない時期が続いてたし、シニアに上がってからは結果を残せたことがほぼなかった。トップとの差を大きく感じてた分、今シーズンやっと戦える位置に戻って来られたことが楽しかったっていうのがあるかな。
もちろん勝つ時もあれば負ける時もあったけど、トップで戦えてるってこと自体がすごくうれしくて。そんな気持ちでいっぱいのシーズンだった。
それぞれの全日本選手権とそれまでの道のり
――そんな3人が今シーズン初めてそろった試合がシーズンの大一番、全日本選手権でした。皆さんにとってどのような位置づけの大会だったのでしょう。
Koshiro Shimada
この1年間は、次の全日本でやめてもいいというくらいの気持ちで取り組んできた。僕はこの全日本にすべてをかけていたんです。
島田 僕の場合はちょっと特殊な気持ちの持ち方で迎えた全日本(選手権)でした。
というのも2年前、全日本が終わった直後に決めていたんです。翌年の全日本をもってやめてもいいというくらいの気持ちで取り組もうと。もう僕のすべてをかけようと。
だから少し休暇を取って年が明けたらすぐにトレーナーさんに付いていただき、体作りを始めて。
そこから本番まですべてがうまくいったかというと、決してそうではありませんでした。僕はもともと試合ごとにシチュエーションに合わせてコンディションを変えていく必要があって。
毎回違う状況にその都度合わせながらなんとかこなしたシーズンでもあったので。
だけど全日本の時だけは、心技体が完璧にそろったと感じました。その前の練習でもショート、フリーとミスなく滑ることができていたし、シーズンを通してみても、本当にベストな状態でした。
運もあったと思うけど、気持ちの強さ、あの大会にかけていた思いが僕に味方してくれたんだと思います。
Sota Yamamoto
GPシリーズの表彰台を目指し臨んだシーズン。ファイナルからの全日本は難しかったけど、僕の調整によるものと結果をすべて受け止めることができました。
山本 僕の場合、今シーズンは序盤のGPシリーズから結果を残したいと思っていたんです。だから照準をGPシリーズに合わせていたというところもあるのかな。もちろん全日本も大事にしてましたけど。
その結果初めて2戦とも表彰台に乗ることができて、ファイナルにもつながったことは自分にとって大きなことでした。表彰台は目標にしてたけど、ファイナル出場まではあまり想像していなかったので。
ただGPシリーズで結果を出せたのは初めてということで、そこからファイナル、そして間をあまり空けずさらに全日本というのは難しかったです。まったく新しい経験でした。
結果的に僕は全日本で失敗してしまったけど、それはここに至るまでの僕の調整によるものだったから全部受け止めることができました。悔しいというのもなく、ただ僕がやってきた結果がそれだったので。
自分にはまだやるべきことがあるんだということが分かって、ポジティブな気持ちで終えることができた試合になりました。
Kazuki Tomono
照準を合わせたのは世界選手権。だから全日本表彰台はゴールではなく、始まり。そんな気持ちで臨んだ全日本は初めてでした。
友野 シーズン序盤の成績からすると驚かれるかもしれないですけど、僕は昨シーズンが終わった瞬間からもう「次は世界選手権に出て、メダルを取るしかない」と思っていました。
だからとにかくこのシーズンは、世界選手権に照準を合わせて計画的にやっていたつもり。この目標のために僕は1年間頑張れたんです。
もちろんGPシリーズでこれまでのリベンジをしたかったし、草太も出てるということもあって、1戦1戦大事にやりたいという気持ちもありました。
でもやっぱり結果を見ると、僕にはまだ何かが足りなかったんですかね。調整不足だったというわけじゃないけど、どこかで気持ちの切り替えができていなかったのかもしれない。
GPシリーズが終わってからは全日本と最大の目標である世界選手権本番までのことをずっと考えて練習に打ち込んできました。ファイナルに出場できなかった分、この1か月を使ってレベルアップして、全日本でメダルを取って、絶対世界選手権に行くって。かなり自分を追い込んで練習をやってきたんです。
結果は3位で高志郎に負けてしまいましたけど、やりきったという充実感は本当にすごかったです。でも同時に心はもう世界選手権に向かっていた。
ゴールではなく、通過点。そんないつもとは違った感覚で臨んだ全日本でした。
「勝った負けたではなく、みんながいい演技をした上で戦いたい」
友野 二人とも話を聞きながらうなずいてたけど、すごいな、他の人の練習ちゃんと見えてたんやな。俺マジで人のこと見えてなかったから結果見て驚いた。高志郎が調子いいのも知らんかったし……。
島田 僕はショート、フリー共に最後から2番目の滑走やったから、誰の演技も見ずに、自分のためだけに来て自分のためだけに滑って帰った。
今までは他の人の点数が気になって仕方がなくて、その度に点数を聞いて浮かんだ感情に揺さぶられてきた。
でも今回は違った。二人の得点が聞こえても自分の演技に思いっきり集中できて。僕にとっても初めての感覚だった。
――その集中が今回の銀メダルという結果につながったんですね。
島田 はい。コーチ、トレーナー……周りの人たちが手厚くサポートしてくれて、集中できる環境を作り上げてくれた。そういったすべてのパズルのピースがカチリとはまった瞬間でした。
友野 俺は2本目のジャンプを絶対成功させたいと思ってたのに、失敗で終わってしまったのがとにかく悔しくて。フリーの演技が終わってからは正直ずっと呆然としてた。3位じゃだめ、2位じゃないと(世界選手権代表に届かない)って。
そんな気持ちでインタビューを受けてたら、全然草太の演技の歓声が聞こえてこないしで、何だかもっと不安になってきて……。
山本 (笑)
友野 あの時は「え、待って待って」って本当に焦った。高志郎はいい演技だったっていうのが分かったけど、とにかくずっとぼーっとしてて……。
でも頑張ってきたことをちゃんと出せる試合がしたいってずっと思ってたし、高志郎が苦労してたのも知ってたし。
最後俺は気持ちで負けた、かけてきた気持ちの順位なんだって感じた。だから高志郎が2位、僕が3位という結果は悔しかったけどうれしくもあった。でも草太についてはもうこっちまで悔しかった(笑)。
島田 負けて悔しいというのもあるけど、みんないい演技をした上で戦いたいという気持ちのほうが大きいよね。
山本 高志郎とは1年半前のオリンピックシーズンのワルシャワカップに一緒に行ったやん。その時僕よりも4回転が安定してたし、軽々と跳んでた。ショートはちゃんとできてて、あとはフリーだけというとこやった。あの時は惜しかったから、今回の全日本で高志郎のきれいでスムーズな4回転がやっと試合ではまってくれたって思った。高志郎は実力がある選手だから本当にうれしくて。
島田 (満面の笑み)
――今シーズンの照準は3人とも違えど、全員が今回の全日本選手権で新しい感覚を味わったというのが興味深いです。ちなみに、終わった後3人で行ったサウナでも今のようなお話を?
山本 しないですね。「サウナ気持ちいい、ごはんおいしい……」くらいです(笑)。
友野 俺らはあんまりしんみりしない。「はい、みんな今日はよく頑張りました! また頑張りましょ!」くらいですよ。こういう機会があって初めてお互いの気持ちを聞くよな。
島田 うん。競技ではあるけど結局自分がやったかやらなかったかだから、相手に勝った負けたはあんまり関係ない。いい演技して負けたらただただ悔しい~!ってだけ。
山本 こういうのも気軽に言える関係よな。俺たち。
これからもみんなと頑張っていきたいって強く思った大会だった。
2022-23シーズンの振り返りトーク、続きはvol.18で!
お互いへの愛とリスペクトが止まらない3人の振り返りトークはまだまだ続きます!
次回もお楽しみに!
撮影/田形千紘 取材・文/轟木愛美 撮影協力/ヨシカミ
Profile
フィギュアスケート選手 |
1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。上野芝スケートクラブ所属。
趣味は古着屋巡り、サウナ。自分らしいスケートを追求し、唯一無二の武器へと変えてきた24歳。観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
日本フィギュア界の“いい兄ちゃん”的存在で、後輩からの信頼も厚い。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年競技以外で見せる魅力にも大きな注目が集まる。
2022-23シーズンは全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし自己ベストを更新するなど一歩一歩確実な成長を見せ、来シーズンへの期待が高まるばかり。好きな色は赤。どんな会場もホームへと変えてしまう世界のエンターテイナー。
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Guest Profile
フィギュアスケート選手 |
2000年1月10日生まれ、大阪府岸和田市出身。中京大学所属。
趣味はサウナ、アロマ、音楽鑑賞。
2015年世界ジュニア選手権3位、2016年リレハンメルユースオリンピック優勝など、ジュニア時代から名を馳せる才能豊かなスケーター。大ケガによる3度の手術を経て競技の場への復活を果たした。2022-23シーズンはかねてから定評のある流麗なスケーティングと見る者の心を揺さぶる表現力に加え、目を見張るほど質の高いジャンプなど技術的にも進化し、一躍次のステージへ。初進出のGPファイナルで銀メダルを獲得、世界選手権代表にも選出された。
友野さんからは「スキニーとタートルネックを着るために生まれた男」と評され、クールなブラックのコーディネートはお手のもの。ギフティングサービス「Unlim」内で開催される、競技の近況や貴重なプライベートトークを聞くことができるオンライン交流会も話題。
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Guest Profile
フィギュアスケート選手 |
2001年9月11日生まれ、愛媛県松山市出身。木下グループ所属。
趣味は音楽・YouTube鑑賞、料理、景色がいい場所巡り。
15歳で単身スイスに渡り、敬愛するステファン・ランビエールコーチのもとで心技体を磨く21歳。
2022-23シーズンは、ジャンプの安定感が増し、国際大会でメダル獲得、GPシリーズで自己最高位更新と、本番でも強さを発揮。照準を合わせてきた全日本選手権で初の表彰台に上り、銀メダルを獲得、目標であったISU選手権、四大陸選手権への出場を果たした。
プライベートでは友野選手とショッピングに行くことが多く、今回の私服はその際に購入したお気に入りの一着。3人の中では一番年下ながら、しっかり者キャラとのこと。英語が堪能で料理も得意。
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Kazuki Tomono 友野一希
フィギュアスケーター
男子シングル日本代表。1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。感情をスケートにのせ、観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
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