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2020.10.24更新日:2020.10.27
まるで中学生のような目で描かれる唯一無二の紀行文
忙しい芸能活動の中のたった5日間の夏休み。奇跡的に確保できた飛行機に乗り、著者は一人きりでキューバに旅立った。日本と異なる社会システムで生きる人たちのこと、そして彼らと接して生じた自分の心の変化を生き生きと描く。
「オードリーの旅エッセイ」、そんな軽い気分で手に取ったこの本は、序盤からものすごいスピードで私を夢中にさせ、一瞬ではるか遠くの地まで吹き飛ばしてくれるような鮮烈な作品だった。離陸前の緊張も、飛行機からキューバの灯りを見る胸のときめきも、翌朝ホテルの屋上に出たときに思わずこぼれた笑いも。何気ない文章なのに自分が体験しているかのように感動がリアルに伝わり、旅の解放感と幸福で胸がいっぱいになる。
格差社会、成功、お金、勝ち組――。そんな日本的価値観に疑問を感じている著者が社会主義国のキューバで見つけた予想外の答えとは。そしてキューバへやってきたほんとうの理由とは。
巧みな展開で最後まで惹きつけながらも、この本を貫くいちばんの魅力は著者の十代のようなピュアな視線に他ならない。真のピュアさとは無知や幼さではなく、もっと見たい、知りたい、と見つめる力の強さのことなのだろう。
あがく姿こそが美しい芸人さんの本
自身の内面にくすぶる嫉妬や欲望、醜い心をすべてさらけ出して吐露する1冊。だが、それ以上にとんでもなく執念の努力家であることが伝わり「本当の才能とはこういうことか」と打ちのめされる。
引きこもりで問題児だった中学生の頃の自らをモデルとして描いた私小説。周りに理解されない、説明もできない、あの頃特有の苦しさが痛いほど伝わってきて、読み返すたびに泣いてしまう。
●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。