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2021.06.24
「どちらさま? 誰かに似ているようですけど」。認知症になった家族とともに過ごす著者が、当事者の視点になって、周りで起きている不思議な出来事や自分の抱える不安と孤独……認知症を通して見える世界を、小説のようにありありと描く。
将来ボケてしまったらどうしよう、とふと不安に思うことはないだろうか。好きな人の顔がわからなくなったり、自分のことさえ思い出せなくなってしまうなんて、怖い。あるいは読者の中には、祖父母の認知症問題に直面している人もいるかもしれない。
自分は今差し迫ってその問題にぶつかっているわけではないけど、ふと手にして読み始めたこの本は、あまりに面白くて夢中で一気読みしてしまった。認知症の人には、世界はこんなふうに見えているんだ……。それまで「怖い」「わからない」という気持ちしかなかった灰色の世界に、一気に色がついていくような読書だった。
認知症患者を困った人扱いするのでもなく、家族の感動物語に昇華するわけでもない。ただひたすらに相手の立場を想像し、淡々と目線を合わせ、スケッチのように心の動きを精密に捉える文章に心打たれる。介護や認知症に関わる人だけでなく、いつか歳をとる全ての人に心からおすすめしたい1冊だ。
別の条件で生きる人の世界をのぞく2冊
サヴァン症候群とアスペルガー症候群でありながら数学の天才でもある著者が、他の人のように普通に生きられない悩みを抱えながら数学の魅力に支えられ、自らの人生を切り開くまでをつづる手記。
視覚障害者との対話を通して、見えない彼らだけが持つ独特の感覚や体の使い方に焦点を当て、見えないことがただの欠落ではなく、世界を捉えるための新たな扉であることを明らかにしていく。
●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。