友野一希の「トモノのモノ語り。」

友野一希連載【 #トモノのモノ語り。】vol.18「山本草太さん、島田高志郎さんと語る2022-23シーズン 」<フィギュアスケート男子>

2023.05.11 更新日:2023.12.22

フィギュアスケート友野一希のノンノ連載「トモノのモノ語り。」

vol.18
山本草太さん、島田高志郎さんと語る
2022-23シーズン

フィギュアスケーター友野一希さんの人気連載に初めてのゲストが登場!
待望のゲストは、お名前部門で連載最多登場回数を誇る山本草太さんと、洋服を買いに行ったり、愛媛を旅行したりとオフを一緒に過ごすことが多い島田高志郎さんのお二人! 前回に続き、今シーズンの振り返りトークをお届け!
▶vol.17はこちら

友野一希さん、山本草太さん、島田高志郎さんが浅草花やしきでオフを過ごしてみたら?

ISU選手権大会を振り返って

「人としても大きく成長できたシーズンに」

――全日本選手権を終え、島田さんは四大陸選手権、友野さん、山本さんは世界選手権とそれぞれISUチャンピオンシップに出場されました。

島田 僕は全日本(選手権)でちょっと力を使い果たしてしまいました。目標にしないといけなかったのは、四大陸選手権に出場することではなくて、メダルを取ること。その先の道を想像しなきゃいけなかった。
ここ2、3シーズンはパンデミックの影響で2試合くらいしか出られないシーズンが続いていたこともあって、経験不足が出てしまいました。
でも考えてみれば今年は7試合も出させていただき、それが何よりうれしかったです。人としてもスケーターとしても大きく成長できたシーズンになったと思います。

「日本開催の世界選手権はものすごく特別だった」

――会場が高地ということもあり、調整がいつも以上に大変だったと思います。その後、島田さんはお二人が出場された世界選手権を会場でご覧になっていましたよね。

島田 はい、世界選手権での二人は本当にかっこよかった。


山本 俺はミスっちゃったけどね。


友野 いや、フリー見たけど、めっちゃよかったよ。


島田 ショートは間に合わなくてスイスの空港で見たんだけど、6分間練習から「ああ草太くん大丈夫かな……」と。

(一同爆笑)


友野 間違いない、不安要素しかない6分間だった(笑)。


島田 「草太くん、ちょっと弱気じゃない?」って心配だった。その前の練習はすごくよかったんだけど。

友野 うん、だから余計に怖かったよな。

――練習がいいと、逆に本番が怖い?

友野 自分もあの時そうだったから。いくら練習で調子がよくてもいざ会場に入ってあの大歓声を前にしたら「パンッ」と集中がはじけて、会場の空気に一気に飲み込まれて心が乱れてしまった。

3度目の世界選手権でしたけど、今まで感じたことのない感覚でした。
でも草太は大丈夫やと思ってたからびっくりした。6分間練習を終えて「おいおいやべーんじゃねえの」って心配だった。

島田 強気な時の草太くんを知ってたからこそ、あの表情を見て……。

友野 それでも俺はいけると思ってたけどな。


島田 パンクだけはするなよ……って祈ってたんですけど。ちゃんと締めて最後まで戦ってる姿はかっこよかった。最後まで戦い抜いた草太くんの姿を見て泣きそうになりました。

友野 練習でちゃんとできていたから、ミスがあってもあそこまでで抑えられたっていうのもあったな。転倒せずに耐えてたし。今のルールやと点数が残らんこともあるけど、ナイスファイトだった。とにかくあの会場は難しすぎた。

山本 当日までの公式練習の曲かけは悪くなかったけど、ショート当日の朝の練習からミスが出始めて。その後本番が始まってお客さんで満員の会場に入ったときに、「あ、これが世界選手権なんだ」ってそこで初めて気付かされた。その結果があのショートの演技だった。

友野 分かるよ。


山本 世界選手権の雰囲気はやっぱり特別だった。終わった後、ああしたほうがよかった、こうしたほうがよかったと思ったけど、そうじゃなくて準備段階の時点で自分のやるべきことに気が付くべきだった。間違った方向に進めていっちゃってたかな、もっと他に道はあったかな、と本番になってから思ったから。
まあでもあの本番での演技が僕のすべてだったな。


島田 いや、普段の草太くん見てるとさ……。

友野 あれが草太のすべてじゃないと思っちゃうよな。練習でどれだけうまくいってても、本番って何か思い当たるふしがあると、それが演技に出ちゃう。

島田 オフシーズンだとどれだけ失敗してもいいけど、試合の時って成功が当たり前で話が進むから、失敗が特別になる。一度ミスをするとそっちに意識をもっていかれて、これまでの成功体験をポジティブに置き換えられなくなって……だからシーズン中は一つのミスをずっと引きずっちゃうんだと思う。


友野 あの日の転倒、あの日のパンクがって脳裏に浮かぶんだよな。

山本 たしかにそうだったかもしれない。緊張するのも大事だけど、いい緊張ではなかったから……。でもあの雰囲気を今シーズン味わえたのは今後の自分にとって有難かったと思ってる。初めての世界選手権であのさいたまスーパーアリーナを経験できたこと。今後の自信につなげていきたい。

「“世界選手権での自分は最強”と言い聞かせてやってきた」

友野一希さん、山本草太さん、島田高志郎さんの2022-2023シーズン振り返りインタビュー

友野 俺は練習では怖いくらい調子が上がっていたし、自信もあった。過去の成功体験を強みに、“世界選手権での自分は最強”なんだっていうのをずっと言い聞かせて、謎の自信全開でやってきたつもり。
でも実際には課題にしていた2本目のジャンプでミスしてしまったことがすべてだったと思う。
よかった点は、その場のアドレナリンに頼るんじゃなくて、練習の成果が出るよう、自分をコントロールして試合に臨めたこと。途中振付が飛んだけど、最後には自信をもって滑ることができたんじゃないかな。
ショート、フリーでミスしたジャンプ2本分の点数でメダルに届かなかったけど、これからも点数はどんどん上がっていくだろうし、また300点時代に突入すると思う。ミスなくやれば表彰台に届くというポテンシャルを示すことができた試合になったから、今後も自分に期待しながら楽しくやっていけたら。
もうそれが一番。スケートで苦しむのは嫌なので。

山本 一希らしいな。

友野 日本での世界選手権は
やってる身からしたら本当にやばくて、最高で最悪の雰囲気だった(笑)。素晴らしい応援が逆に全員から銃口を向けられてるような、それくらい張りつめた空気ととんでもない緊張感。
でも演技が終わればそのすべてが自分だけのものになって、人生最高の瞬間になる。
応援バナーも本当にうれしくて、あの光景を目にしっかりと焼き付けなきゃって。3回目だけどたくさんの特別が詰まった大会になった。

島田 あのリンクで滑ってるスケーター全員がかっこよかったよ。まずあの舞台に立つだけですごいことなんだから。
僕も全日本の時にさいたまスーパーアリーナで滑らせてもらったことがあるけど、自分もあんな場所で滑ってたかな?と思うもん。
世界選手権となるとさらに特別だったし、男子シングルはもちろん、どのカテゴリも素晴らしくて、感情がずっと揺さぶられっぱなしだった。
一スケートファンとして大きな声援を送ったし、二人の戦う姿に憧れた。刺激をもらったし、僕もあの舞台に立ちたいって改めて思った。

いい演技の指標は島田さんからのLINE!?

友野一希さん、山本草太さん、島田高志郎さんが3人でお出かけ!

※施設管理者の立ち合いのもと、撮影を行いました

――素敵な関係性ですね。実際に会場でご覧になった感想をお二人に伝えましたか?

友野 はい、高志郎から有難いLINEをいただきました。


島田 あ、草太くんには絶対スターズ・オン・アイスで直接言おうと決めてたので一希くんにだけ。


友野 俺は自分から「褒めて褒めて~」って連絡をしたので(笑)。

山本 俺はユニバ(ISU冬季ワールドユニバーシティーゲームズ2023)のショートで初めて100点超えた時にきたな。


島田 その瞬間を待ちわびてたからな。

友野 こっちもやばいって時はLINE送るし。高志郎は結構厳しいから、本当にいい演技をした時にしかLINEがこないイメージ。だからきた時はめっちゃうれしい。あ、今日よかったんやって


島田 ふふふ。僕は悪い時でもかっこよかったら送るよ。

友野 (うれしそうな表情)

来シーズンに向けて

友野一希さん、山本草太さん、島田高志郎さんのインタビュー。来シーズンの目標は?

Koshiro Shimada

今シーズンはたくさんの試合に出させていただき、人間としてもスケーターとしても成長できました。試合ごとの調整の仕方に悩むこともありましたが、どれもいい経験になりました。理想のスケートを目指して来シーズンも励んでいきたいと思います。

Sota Yamamoto
今シーズンは試合が続いて少し調整が大変だったところもありました。だけどトップ選手はそういうものを経験して強くなっていくものだと思います。苦しいこともあるけどまず目の前の試合をこなすことを大切にしていきたいです。
シーズンで得たものを整理して、来シーズンはさらにレベルアップしてみんなと競い合っていけたらと思います。

Kazuki Tomono

世界選手権ではメダルに届かなかったけど、調整する力がついたし、自分のポテンシャルを示せたシーズンになりました。シーズンを通して安定した結果を出すことが真のトップスケーターへの道だと分かったので、もう皆さんをハラハラさせないよう安定感を強化していきたいです。





Special Question!

やってみたいお互いのプログラムは?

友野一希さん、山本草太さん、島田高志郎さんがメリーゴーランドで楽しむ姿


■ Sota’s Program

島田 草太くんのプログラムって本人しかできん感じやな。あの伸びやかなスケーティングあってこそってのはある。

友野 分かるかる。俺は「ポエタ」。


島田 僕も言おうとした~。「ポエタ」の印象が強すぎる。

友野 あと「アンセム」も好きすぎるし、『ジキル&ハイド』もかっこよかった。草太の衣装を着たい欲もあるな。圧倒的王者感のある衣装が多くて、「か、勝てない……」みたいなの着るやんか。金メダルと相性がいい“金メダル衣装”着こなしがち。あとは『ローレライ』もいいよなあ。(歌い出す)


島田 『サンダーバード』もええよな。

友野 たしかに! 『サンダーバード』なら俺にもできるかも!(また歌い出す)


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■ Koshiro’s Program

山本 俺は「Adios」やりたい。高志郎はベンジャミン・クレメンタインが合うよ、『ネメシス』とか。

友野 うんうん。俺はチャップリンの中の「スマイル」かな。

山本 あー、一希合うなあ。


友野 俺と高志郎ってテイストがかぶりがちなんですよ。でも最近はクールテイストにいってるよな。ハッピーなプログラムが合うって思われてるかもしれないけど、俺はそうじゃないって思ってる。

島田 いつもそう言ってくれるんですよね。


友野 「Adios」とか『ロミオ+ジュリエット』とか、ちょっとダークでシリアスな高志郎のプログラムがすっごい好き。
だから
今回の「Come What May」もめっちゃよかった。高志郎は芸術面が本当に長けてるよな、ステファン(・ランビエールコーチ)のスケートを継承してるというか。見てるこっちまで質がよくなるようなスケート。いうならば、美術館に飾れるような。


=============

Kazuki’s Program

島田 一希くんのプログラムは本人のカラーが色濃く残っちゃってるからやりたくない(笑)。『ラ・ラ・ランド』とか「巴里のアメリカ人」とか大好きだけど、この曲といえばもう一希くんっていう人が多いと思う。あとウエストサイドストーリー』もめっちゃ好き。

 

友野 「巴里のアメリカ人」は結構言われるな。

山本 俺らはさ、スケートのタイプが真逆やん。

友野 虎と龍な。


山本 だから考えたけどやっぱ難しいわ。一希がやってるのを見るのが好きなのはウエストサイドストーリー』

友野 二人から挙がったウエストサイドストーリー』は俺もお気に入り。プログラムはもちろん、あの時の自分のスケートが好き。


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島田 それにしてもみんな昔のプログラム名が次々に出てくるのがすごいな。

友野 仲いいのもあるけど、ショーの時も一人のスケーターとしてつい見入っちゃう二人だから。高志郎のスケート見てると、毎回悔しいなって本気で思う。自分が嫉妬してしまうようなスケートなんやもん。
スターズ・オン・アイスでの草太の「ポエタ」もすごかった。練習でのクロスを見てるだけで見惚れるし……。心からかっけえって思うスケーターですよね、この二人は……ね、やっぱり……。(自分で言いながらだんだん照れてくる)

山本島田 褒められるん、気持ちいい~!


友野 ふふふ。僕もそう思ってもらえるようなスケートを目指していかなければって思いましたね。

島田 頑張ってくれたまえな。

友野 な、なんなんだこいつ~~(笑)!

続きはvol.19で!

次回は懐かしい思い出話から、3人の関係性や普段の素顔に迫るトークをお届け予定! 公開をお楽しみに!


撮影/田形千紘 取材・文/轟木愛美

 

Profile

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フィギュアスケート選手

 

1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。上野芝スケートクラブ所属。

趣味は古着屋巡り、サウナ。自分らしいスケートを追求し、唯一無二の武器へと変えてきた24歳。観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。

日本フィギュア界の“いい兄ちゃん”的存在で、後輩からの信頼も厚い。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年競技以外で見せる魅力にも大きな注目が集まる。
2022-23シーズンは全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし、自己ベストを更新するなど一歩一歩確実な成長を見せ、来シーズンへの期待が高まるばかり。好きな色は赤。どんな会場もホームへと変えてしまう世界のエンターテイナー。

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フィギュアスケート選手

 

2000年1月10日生まれ、大阪府岸和田市出身。中京大学所属。
趣味はサウナ、アロマ、音楽鑑賞。
2015年世界ジュニア選手権3位、2016年リレハンメルユースオリンピック優勝など、ジュニア時代から名を馳せる才能豊かなスケーター。大ケガによる3度の手術を経て競技の場への復活を果たした。2022-23シーズンはかねてから定評のある流麗なスケーティングと見る者の心を揺さぶる表現力に加え、目を見張るほど質の高いジャンプなど技術的にも進化し、一躍次のステージへ。初進出のGPファイナルで銀メダルを獲得、世界選手権代表にも選出された。
友野さんからは「スキニーとタートルネックを着るために生まれたような男」と評され、クールなブラックコーディネートはお手のもの。ギフティングサービス「Unlim」内で開催される競技の近況や貴重なプライベートトークを聞くことができるオンライン交流会も話題。


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フィギュアスケート選手

 

2001年9月11日生まれ、愛媛県松山市出身。木下グループ所属。
趣味は音楽・YouTube鑑賞、料理、景色がいい場所巡り。
15歳で単身スイスに渡り、敬愛するステファン・ランビエールコーチのもとで心技体を磨く21歳。表現力が豊かで、抒情的なスケーティングで魅了するアーティスティックなスケーター。
2022-23シーズンは、ジャンプの安定感が増し、国際大会でメダル獲得、GPシリーズで自己最高位更新と、本番でも強さを発揮。照準を合わせてきた全日本選手権で初の表彰台に上り、銀メダルを獲得、目標であったISU選手権、四大陸選手権への出場を果たした。
友野さんとプライベートでショッピングに行くことが多く、今回の私服はその際に購入したお気に入りの一着。3人の中では一番年下ながら、しっかり者キャラとのこと。英語が堪能で料理も得意。

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Kazuki Tomono

フィギュアスケーター

1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。
2026年のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックを目指す男子シングル日本代表。感情をスケートにのせ、観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
古着、サウナ、インテリアショップ巡りなど多彩な趣味をもつ26歳。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年は競技以外で見せる魅力にも注目が集まる。
表現の名手であり、オフシーズンはアイスショーに引っ張りだこ。各ショーの特性に合わせた多彩なパフォーマンスでエンターテイナーぶりを発揮している。
新シーズンは「競技者としてより高みへ」をテーマに練習に励む日々。今季のフリープログラムは『Butterfly』。さなぎが蝶へと変化するように、彼もまた、圧倒的変化を求め日々成長中。その美しき進化に出会える日はもうすぐそこだ。

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