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西加奈子著・『夜が明ける』を読む!【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

2021年、間違いなく一番「すごかった」小説

『夜が明ける』

西加奈子・著 ¥2035 新潮社


15歳の時に出会った俺とアキ。社会に出てそれぞれの道に進むも、パワハラ、差別、貧困……社会のあらゆる困難が二人に襲いかかった。この社会で生きることの困難さと、二人の唯一無二の友情を迫力ある文章で描く長編小説。

 ひさしぶりに言葉に表せないくらいのすごい小説に出会ってしまった。暗くて、重くて、決して読んでいて楽しい本ではないのだけど、それでも息をするのも忘れてるんじゃないかというくらい夢中になって、徹夜で一気に読んでしまった本。それで仲のいい本好きの書店員友達に聞いたらやっぱりみんな「これは2021年でいちばんすごかった本」だと口々に言っていたので、もう勝手にこれがナンバー1だということにさせていただきます!
 私たちの社会はキラキラと楽しいことばかりだけじゃなくて、貧困や差別を「自己責任」と言われて苦しめられている人がたくさんいる。いや、私たちも自分の苦しさを仕方ないことだと思わされていたり、あるいは苦しい社会を再生産して誰かを苦しめてしまっているのかもしれない。
 ひとりで暗い一本道を走り続けるようなこの読書は、走り終えたとき、夜が明ける前の光を感じさせてくれる。その光を感じたとき、あなたも「この本を読んでよかった」ときっと思ってくれると思う。


社会の苦しさの中で懸命に生きる人の物語

『おおあんごう』

加賀翔・著 ¥1540 講談社


お笑い芸人「かが屋」の加賀さんによる初の小説。岡山の田舎町を舞台に、暴力的な父親の支配に振り回され苦しみながら、友情に力づけられ「笑い」に希望を見いだしていく少年の姿を爽やかに描く半自伝的小説。

『やさしい猫』

中島京子・著 ¥2090 中央公論新社


シングルマザーと8歳年下の自動車整備士。二人が恋をして手に入れた普通の幸せがある日突然奪われたのは、彼が外国人で不法滞在の扱いを受けたから。日本の入管の差別問題と、人々の温かさを描く家族小説。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。

2022年3月号掲載

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