エンタメ部

No.297 莉緒

『汝、星のごとく』が描く愛のカタチ

2026.10.26

先日、映画『汝、星のごとく』を観に行ってきました。

記事にするまで少し時間が経ってしまいましたが、それでも、まだ観ていない方にぜひ劇場で味わってほしい。そう思える作品だったので、今回はその魅力をご紹介します。

映像も、音楽も、役者も、そして言葉も。どれを切り取っても美しく、観終えた後も、すぐには物語の世界から抜け出せない。そんな深い余韻に包まれる作品でした。

もともと原作のファンだったこともあり、公開を心待ちにしていた本作。

今回は、原作ファンの私が心を動かされた映画ならではの魅力を振り返りながら、小説と映画、それぞれで味わう『汝、星のごとく』の世界について綴っていきたいと思います。

本の中で生きていた2人に、ようやく出会えた。

原作のすべてを、2時間という限られた時間に収めることはできません。映画ならではの表現や、原作とは異なる部分もありました。

それでも、物語が始まって間もなく、胸いっぱいに広がったのは、「生きていたんだ」という感動でした。

本の中にしかいなかった暁海と櫂が、確かにそこにいたのです。

凪いだ海も、吹き抜ける風も、二人の表情も。原作の丁寧な描写によって、私の頭の中で幾度となく思い描いていた情景が、スクリーンの中に広がっていきます。

まるで、自分の想像の中で生きていた二人に、ようやく出会えたような気がして。物語の世界が目の前に立ち上がっていくことに、胸が高鳴ったのを覚えています。

原作を読んだことがある方には、頭の中に描いていた景色が映像になる喜びを。そして、まだ原作を読んでいない方にも、映像や音楽を通して物語の世界に入り込む体験を。どちらの楽しみ方もできることが、映画ならではの魅力なのだと思います。

言葉にならない感情まで伝える、役者たちの演技

何より心を揺さぶられたのは、役者たちの演技でした。

とりわけ、櫂が少しずつ弱っていく姿には、涙をこらえきれませんでした。そこにいたのは、物語の登場人物という枠を越え、迷い、傷つき、それでも誰かを想いながら生きる、一人の人間でした。

実力派の役者たちが織りなす演技は、言葉だけでは伝えきれない感情にまで、確かな輪郭を与えていきます。いつしか物語を観ていることさえ忘れ、まるで誰かの人生をすぐそばで見届けているような感覚に包まれました。

また、本作はシリアスな場面を過度に描ききらず、観る人の想像に委ねる余白を残しています。表情や声の揺らぎ、その場に流れる沈黙。全てを描ききらないからこそ、言葉にならない想いにまで心を巡らせ、登場人物たちの苦しみや葛藤に深く寄り添うことができるのだと思います。

『汝、星のごとく』予告

「正しさ」と「愛」の狭間で、何を選ぶのか

本作を観ながら、何度も考えさせられたのが「正しさ」とは何なのか、ということでした。

日本の田舎ならではの美しい風景。その一方で描かれるのは、小さなコミュニティだからこそ、プライベートなことまで周囲に知れ渡り、世間の常識から少し外れただけで、心ない言葉を向けられてしまう息苦しさです。美しい景色の裏側にある、人と人との距離の近さが生む残酷さ。その対比が、物語をより切実なものにしていました。

本人が望んだわけではない家庭環境や、親という存在によって、子どもでありながら自分の人生を自由に選べないこともある。自分ではどうにもできない事情に縛られ、幸せをつかもうともがく人たちの姿に、胸が苦しくなりました。

それでも、暁海と櫂は自分たちなりの幸せを求めて、もがき続けます。周囲からどう見られるか、世間の常識に照らして正しいか。それだけでは割り切れない思いを抱えながら、それでも大切なものを選び取ろうとする二人の姿に、深く心を動かされました。

もちろん、愛があれば何もかも許されるわけではありません。それでも、誰かが決めた正しさが、すべての人にとっての正解とは限らない。社会から見れば正しくない選択でも、その人が自分の人生を生き、幸せを見つけるためには必要なこともあるのではないでしょうか。

自分の人生を生きること。そして、自分とは違う誰かの選択を、簡単に否定しないこと。

誰かの事情をすべて理解することは難しくても、わからないからこそ、決めつけずに見守ることはできるはずです。

『汝、星のごとく』が描くのは、ただ美しいだけの愛ではありません。思いどおりにならない現実の中で、それでも誰かを想い、自分なりの幸せを探し続けること。その切実さが、観る人の心に深く残るのだと思います。

最後に

いかがでしたか?

『汝、星のごとく』は、ぜひ劇場のスクリーンで味わってほしい作品です。映像や音楽、役者の方々の表情が重なり合うことで、物語の世界にぐっと引き込まれます。

終盤は涙が止まりませんでした。でも、それはただ悲しいだけの涙ではなく、心の奥にたまっていたものが、少しずつほどけていくような涙でした。観終えたあと、どこか心が洗われたような感覚が残っています。

そしてきっと、もう一度、本を開きたくなる。

映画を観たあとだからこそ、登場人物の言葉や何気ない描写が、以前とは違った意味を持って胸に響くかもしれません。ページをめくりながら、暁海と櫂が歩んできた人生をもう一度たどりたくなる。そんな気持ちにさせてくれる作品です。

小説から入るのも、映画から入るのも、どちらも素敵な楽しみ方。まだ物語に触れていない方も、すでに原作を読んだ方も、それぞれの入り口から『汝、星のごとく』の世界に出会ってみてはいかがでしょうか。

  • 出身地

    埼玉県出身

  • 身長

    154cm

  • 学年

    大学4年生

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