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No.210 くらげ
『黒後家蜘蛛の会1』アイザック・アシモフ【感想・おすすめ本】
2024.08.31
安楽椅子探偵の名作『黒後家蜘蛛の会1』を紹介します。
『黒後家蜘蛛の会1』とは?
『私はロボット』などのアイザック・アシモフの推理短編集。弁護士、作家、画家に数学者、化学者、暗号専門家……〈黒後家蜘蛛の会〉の会員六人はミラノレストランで月に一度の晩餐会を開きます。食後にはゲストによって謎が持ち込まれ、〈黒後家蜘蛛の会〉の会員たちは丁々発止の議論を始めますが、答えには辿り着けず、最終的に謎を解くのはミラノレストランの給仕ヘンリーだった——というのがこの短編集のお決まりの流れです。
「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?」
ミステリというと、陰惨な事件が思い浮かびますが、なんと、この短編集では殺人事件はほとんど起こりません。ミステリは読んでみたいけど、殺人事件はちょっと……という方にも胸を張っておすすめできます!
ミラノレストランの美味しそうな料理、「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?」に代表されるおしゃれな言い回しの数々、奇妙な謎……。魅力的な要素がたっぷりの本作ですが、私が惹かれるのはやはり、給仕役のヘンリーの存在です。
ヘンリーはこの作品の謂わば探偵役、物語に解決をもたらす存在です。作中でヘンリーはゲストによる謎についての話を聞いただけで謎を解いてしまいます。探偵役が一定の場所から動かず、事件を解く——安楽椅子探偵です。弁護士や画家、数学者といった〈黒後家蜘蛛の会〉の面々が議論を重ねても解くことが叶わなかった謎に、物語終盤、話を聞いていたヘンリーが膝を打つような——時には言葉遊び的な面白さも含んだ——解決を与えます。
議論が行き詰まったところで、控えめで謙虚なレストランの給仕ヘンリーが大胆な解決を披露する様には、ただ謎が解けた以上のカタルシスを覚えます。
殺人がほとんど起こらないミステリ
ヘンリーによる解決の後、アシモフの(本人曰く)「大変気安く個人的である」文体であとがきが続くところも含めて楽しい一冊です。
繰り返しになってしまいますが、殺人事件はほとんど起こらないので、ミステリは殺人が起こるから読まないという方にもぜひ手に撮ってほしいです。
公式サイト→https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488167097https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488167097
おすすめ本
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出身地
東京都
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身長
159cm
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学年
大学2年生
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推し
推し:コスメ集め(主にネイル!)、文章を書くこと、小説(ミステリ!)、ピアノ、ゲーム、FAKE TYPE.
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