――後編は小田さんを語る上で欠かせない“歌”について話を掘り下げていきたいと思います。コロナ禍の新しい試みとしてハロー!プロジェクトでは往年の名曲をソロでカバーするコンサート『~The Ballad~』を行なっていましたが、そこから得たことがあれば教えてください。
「モーニング娘。の活動で大事にしていた表現から自分を引き離して、新しいジャンルに挑戦したことはとてもいい刺激になりました。バラードってすごく感情的な歌詞が多いじゃないですか。私は大失恋の歌を歌っていたんですけど、練習中に感情移入しすぎて過呼吸になりそうなほど乱れてしまったことがあったんです。その時、自分の実力が、歌唱力がいかに不足しているかということを改めて感じました。もっと感情や歌声を自分で管理できるようにならないといけないな、と新しい目標が見えました」
――コンサートを経てスキルアップしたメンバーも多かったのではないでしょうか。
「ソロ歌唱ということもあり、参加したメンバー全員が歌と向き合ういい機会になったと思います。ただ技術的な話として考えると『~The Ballad~』を経てみんな歌がうまくなりました、みたいな単純な話ではないぞと思っちゃうんです、正直。こんな発言すると『小田がまたなんか言ってるぞ〜』って思う人もいると思うんですけど(笑)」
――(笑)。そんなことないです、むしろその話がすごく気になります。
「音楽に対して真摯に向き合っていたり興味がある人って、私たちが大事にしている“リズム”という部分をすごく敏感に感じ取ってくれるんです。でも世の中全体として見ると、そこに注目している人って全然多くない、むしろ少数派なんですよ。だからこそ感情的な表現だったり、ビブラートや高音みたいな分かりやすいものに対して『歌がうまい!』みたいな評価が生まれやすいのかなと。
なので、そういう分かりやすい部分が直結するバラードというジャンルで評価してもらえるのはありがたいことなんですけど、同時に『それだけじゃない!』と思う熱い気持ちもあって」
――バラードで見せられたのは、あくまで小田さんやメンバーたちの新しい一面ということですよね。
「そうです。私たちだけではなく、ファンの方たちにとっても新しい何かをお届けできるような貴重な機会だったので、本当にそれはよかったと思います!」
――同じくコロナ禍ではハロー!プロジェクトの各グループのメンバーを4チームに分けて、全国を回るコンサートツアー『花鳥風月』も開催していましたよね。
「はい。『花鳥風月』は覚えないといけないことが多くて、そういう意味では大変だったと感じたメンバーも多いと思うのですが、私が配属された鳥チームはホワホワした子が多くて終始平和なムードで本当に癒やされました。この時のメンバーとは今でもすごく仲がよくて会うとキャッキャしちゃいます」
――鳥チームではメンバーの不参加によって小田さんが一番先輩という立場になったそうですが、まとめ役をするうえで心がけたことはありますか?
「各々が事前に家で練習するのはいいことですけど、ただそれを披露するだけなら誰でもできるじゃないですか。だから私はチームとして、最初の段階からステージを一緒に作っていくことを大切にしたいなと思って取り組みました。
まだあまり経験がない子だと、先輩に比べて覚えが悪いことに対して焦ったりしがちだと思うんですけど、『せっかくプロの先生に教えてもらえる機会があるんだから、そこで吸収しよう』って声をかけてみたり。このチームだからこそできることをしたくて。ちゃんとリーダーっぽいことをやれていたのかは分からないですけど(笑)」
――小田さんが一番先輩になるというのは今のモーニング娘。にはないシチュエーションですよね。
「そうなんですよ。心を許して頼れる先輩たちとこの10年一緒に過ごしてきたので、未だに末っ子の人格がありますもん(笑)。でも後輩の面倒を見るのも大好きなんですよね」