【モーニング娘。’22】小田さくら加入10周年記念インタビュー後編 突然訪れた「歌えない」時期を乗り越え、さらに深まった“アイドル”愛

2022.11.04更新日:2022.11.23

【モーニング娘。’22】自分を奮い立たせる原動力である“人”という存在、愛する歌への向き合い方について【小田さくら】

この秋、モーニング娘。加入10周年を迎えた小田さくらさんの魅力をクローズアップする特別企画。モードでちょっぴり大人っぽい世界観の撮り下ろし写真とともに、モーニング娘。への思いを詰め込んだロングインタビューをお届けします。後編ではここ数年で起きた自身の変化、大好きな歌について語ってもらいました。

“バラード”をカバーするという新しいコンサートに挑戦して気づいたこと

モーニング娘。’22小田さくら⑤

――後編は小田さんを語る上で欠かせない“歌”について話を掘り下げていきたいと思います。コロナ禍の新しい試みとしてハロー!プロジェクトでは往年の名曲をソロでカバーするコンサート『~The Ballad~』を行なっていましたが、そこから得たことがあれば教えてください。

「モーニング娘。の活動で大事にしていた表現から自分を引き離して、新しいジャンルに挑戦したことはとてもいい刺激になりました。バラードってすごく感情的な歌詞が多いじゃないですか。私は大失恋の歌を歌っていたんですけど、練習中に感情移入しすぎて過呼吸になりそうなほど乱れてしまったことがあったんです。その時、自分の実力が、歌唱力がいかに不足しているかということを改めて感じました。もっと感情や歌声を自分で管理できるようにならないといけないな、と新しい目標が見えました」

――コンサートを経てスキルアップしたメンバーも多かったのではないでしょうか。

「ソロ歌唱ということもあり、参加したメンバー全員が歌と向き合ういい機会になったと思います。ただ技術的な話として考えると『~The Ballad~』を経てみんな歌がうまくなりました、みたいな単純な話ではないぞと思っちゃうんです、正直。こんな発言すると『小田がまたなんか言ってるぞ〜』って思う人もいると思うんですけど(笑)」

――(笑)。そんなことないです、むしろその話がすごく気になります。

「音楽に対して真摯に向き合っていたり興味がある人って、私たちが大事にしている“リズム”という部分をすごく敏感に感じ取ってくれるんです。でも世の中全体として見ると、そこに注目している人って全然多くない、むしろ少数派なんですよ。だからこそ感情的な表現だったり、ビブラートや高音みたいな分かりやすいものに対して『歌がうまい!』みたいな評価が生まれやすいのかなと。

なので、そういう分かりやすい部分が直結するバラードというジャンルで評価してもらえるのはありがたいことなんですけど、同時に『それだけじゃない!』と思う熱い気持ちもあって」

――バラードで見せられたのは、あくまで小田さんやメンバーたちの新しい一面ということですよね。

「そうです。私たちだけではなく、ファンの方たちにとっても新しい何かをお届けできるような貴重な機会だったので、本当にそれはよかったと思います!」

――同じくコロナ禍ではハロー!プロジェクトの各グループのメンバーを4チームに分けて、全国を回るコンサートツアー『花鳥風月』も開催していましたよね。

「はい。『花鳥風月』は覚えないといけないことが多くて、そういう意味では大変だったと感じたメンバーも多いと思うのですが、私が配属された鳥チームはホワホワした子が多くて終始平和なムードで本当に癒やされました。この時のメンバーとは今でもすごく仲がよくて会うとキャッキャしちゃいます」

――鳥チームではメンバーの不参加によって小田さんが一番先輩という立場になったそうですが、まとめ役をするうえで心がけたことはありますか?

「各々が事前に家で練習するのはいいことですけど、ただそれを披露するだけなら誰でもできるじゃないですか。だから私はチームとして、最初の段階からステージを一緒に作っていくことを大切にしたいなと思って取り組みました。

まだあまり経験がない子だと、先輩に比べて覚えが悪いことに対して焦ったりしがちだと思うんですけど、『せっかくプロの先生に教えてもらえる機会があるんだから、そこで吸収しよう』って声をかけてみたり。このチームだからこそできることをしたくて。ちゃんとリーダーっぽいことをやれていたのかは分からないですけど(笑)」

――小田さんが一番先輩になるというのは今のモーニング娘。にはないシチュエーションですよね。

「そうなんですよ。心を許して頼れる先輩たちとこの10年一緒に過ごしてきたので、未だに末っ子の人格がありますもん(笑)。でも後輩の面倒を見るのも大好きなんですよね」

自分のことが好き、同じぐらい他人のことも好き

モーニング娘。’22小田さくら⑥

――そんな小田さんが今愛するもの、好きなものについても是非話を聞かせてください。

「自分が思う“愛”を語る上で欠かせないキーワードは“人”だと思います。『なんでそんなに人のためにするの?』と言われることもあるんですけど、それは単純に自分がしたいから。それに尽きます。

私、人に対しての愛情が本当にすごくあるんですよね。でもそれは自己犠牲とかそういうことじゃないんですよ。たとえば、私はヘアメイクを頑張ったり、ステージでの魅せ方を研究したりと自分磨きをすることが大好きなんですけど、そこを評価してくれるのも結局は“人”じゃないですか。見てくれる人がいるからこそやりがいを感じられるし頑張れる。だからなんでしょう、まず自分のことが好きで、同じぐらい他人のこともすごく好きな人なんだと思います(笑)」

――見返りを求めたくなることはないんですか?

「それはないですね。でももっと多くの人が他人のことを考えるようになったら世界はもっと平和でよくなるのにな、とは思います。集団の力って本当に強いじゃないですか。古代から人間はそうやって生き抜いてきた生き物ですし。

でも現代は個人で自立しているほうがカッコイイみたいな風潮もありますし、一方的に助け合いみたいなものを強要するのはまた違いますよね。私は私、皆さんは皆さんで大事にしたいものがそれぞれあっていいと思います。でも私のファンにはできれば、他の人に対しても優しい人であってほしいです!」

――そういった大きい視点で物事が考えられるようになったのは、アイドルとして経験を重ねた結果ですか?

「そうですね、今振り返るとモーニング娘。に加入してからの数年は、ちょうど思春期というかトゲトゲしたりしていたんですよね。人からの評価が気になったり、自分と他人を比べてしまったり……とにかく気を張って生きていたなぁって(笑)。最近は昔に比べて雰囲気が柔らかくなったと言われることが増えたんですけど、こっちが本来の自分の姿なんだと思います。でも思春期の時の気持ちも忘れずに持ち続けてはいたいです」

常に120点を求められることがつらかった時期

モーニング娘。’22小田さくら⑦

――活動していく中で気持ちの変化が“歌”に影響することはありましたか?

「ありました。歌うことはずっと好きなんですけど、先ほどお話しした『~The Ballad~』ぐらいのタイミングで、突然歌うのが楽しくなくなってしまった時期がありました。“評価される”ということが急につらいと感じるようになっちゃったんですよね。小田さくらは歌えて当然、できて当然みたいな空気感に対して『……なんで?』と思っちゃって。常に120点を求められることが、その時は本当につらかったです。私は結構いつもギリギリの状態まで自分を追い込むタイプなんですけど、そういうのを顔に出さないタイプなので」

――すごく本音の部分のお話ですね。

「私は普段から自分たちが出しているコンテンツに対してのコメントとかも結構見るタイプなんですけど、『小田さくらは本気を出したらもっとすごそう』とか書かれていて『……本気ですけど⁉︎』みたいな(笑)。これはちょっとした笑い話ですけど、怖いのは知らないうちに自分でもそういう声や意見に取り込まれちゃっている部分があったということ。

知らないうちに“私はもっとできる”って自分に期待しちゃっていたから、そういうところでも自分を追い込んでしまったんだと思います。体調不良が続いて機能性発声障害という診断を受けたのもちょうど同じタイミングですし、いろいろなバランスが崩れちゃって」

――いろいろな原因が重なってのスランプだったんですね。

「そんなボロボロの状態に加えて、コロナ禍で今まで一緒にやっていたコンサートのチーム体制が変わってしまい、今までのように意思疎通がうまくできなくなって……。その時は本当に『歌いたくない』って状態になっていましたね」

――歌いたくないけど歌わないといけないという状況はつらかったですか?

「そこはハッキリと『歌えません』と伝えました。それで花鳥風月の2回目のツアーでは歌割りを減らしていただきました。もしかしたら気づいている方もいたかもしれないですね」

――歌わないことで不安になったりはしませんでしたか?

「逆に気持ちがぐっと楽になりました。声の調子がよくない時期でしたし、間違えた時のお客さんの反応を心配しないでいられただけで心によかったというか。なんでしょう……もちろん体調は大事なんですけど歌う時、自分にとって大事なのは感覚とか気持ちの部分なんですよね。

実力ももちろん大事ですけど。でも今はそんな大変な時期を乗り越えてすっかり大丈夫になりました。歌うこともちゃんと楽しめています! 今は本当に心身ともにすごくいい状態です」

自分にしかできないことをしていきたい

モーニング娘。’22小田さくら⑧

――小田さんは歌だけではなくダンスも得意な印象があります。

「うれしい! 加入当初から歌を褒めていただく機会は結構あったんですけど、歌がうまいだけならアイドルをやってステージに立つ意味がないじゃないですか。だからダンスも上手って言ってもらいたくて今まで頑張ってきたんですよ。だってカッコよく言いたいじゃないですか『踊れるけど?』って(笑)。

でもステージを魅せるからには、歌とダンスだけじゃまだ足りないんです。表情だったり髪の毛の使い方だったり、とにかく常に全身全霊をかけてパフォーマンスすることを心がけています。本当にこれだけは言えるんです、『どこも手を抜かずに頑張っています』 と。その結果、体調を何度か崩しちゃっているので、改善すべき点はおおいにあると思うんですけど(笑)」

――休める時はちゃんと休んでくださいね……。

「ありがとうございます(笑)。でも私、さっきもお話ししたんですけど無理な時は『無理』って言えるタイプなんです。普通に考えたら言いにくいことだと思うんですけど、誰かが言うことでそれに続く人が出てきたらいいなとも思っていて。後輩たちのためにもまずは私が先頭をきってハッキリ発言していきたいです。直接的じゃなくてもいいんです、会社の人たちにこういう発言をする子がいたなって記憶を残せるだけでも意味があると思うので」

――そのパワーの源はどこからわいてくるのでしょうか?

「うーん、結局は自分のためにしているんだと思います。私は自分にしかできないことをしたいんです。他人ができることを自分がしても仕方ないって思っちゃうので」

――感覚をアップデートするためにしていることはありますか?

「音楽の話だと、最近はバンド系のライブに行くようになりました。楽器の音を聴く力を鍛えたくて。バンドって弾いてる動きと音が一致しているのですごく勉強になるんです。曲を知らなかったバンドの音楽をそこで初めて聴いて、自分がどういう感情になったのか、そういうことも覚えておきたくて。そうやって自分でコツコツと研究していくような作業は、昔から大好きなんですよね。

それこそ結構前の話になるんですけど、歌い手さんたちのありとあらゆる曲を聴いて、自分でカテゴリー分けをしながら曲や声、そのマッチングだったり、どういう組み合わせで人は感動するのかということを考えてみたりしていた時期もあります。これらは全部趣味でもあるんですけど、モーニング娘。の活動に生かせることばかりなんですよね」

――小田さんのお話を聞いていると、モーニング娘。やアイドルそのものへの愛がすごく伝わってきます。

「ありがとうございます。私はやっぱりアイドルでありたいんだなって最近改めて思います。そして他にやりたいことが今はないかも……? 可愛い曲もカッコイイ曲もなんでもできるのってアイドルの特権じゃないですか。私はいつだってその曲に寄り添った表現を追求していきたいんです。

だからたとえばの話ですけど、いつか私がアイドルを卒業して歌手になったとします。その時に『なんでまだ可愛い曲を、可愛い子ぶって歌っているの?』みたいな目を向けられることって絶対あると思うんですよ。まぁちょっと極端すぎる話かもしれませんが(笑)。

何が言いたかったかというと大好きなモーニング娘。でいられる今の環境、そして時間に感謝して、これからも思いきり表現していきたいな、ということです!」

Profile

●おだ さくら

1999年3月12日生まれ、神奈川県出身。2012年に開催された「モーニング娘。11期メンバー『スッピン歌姫』オーディション」に合格して同年9月に11期メンバーとして加入。愛称はおださく、さくら。メンバーカラーはラベンダー。特技はフラダンス。猫好きとしても知られる。加入当初から歌唱力への評価が高く、公式YouTubeチャンネル(モーニング娘。)に投稿されたMISIAの『逢いたくていま』をカバーした動画は178万回再生を記録するなど大きな話題を集める(2022年10月現在)。フリーダムにボケまくる先輩メンバーのツッコミ役としても活躍。

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小田さくら『逢いたくていま』カバー

Information

モーニング娘。’22 

『Swing Swing Paradise / Happy birthday to Me!』

通算72枚目となるモーニング’22の両A面シングル『Swing Swing Paradise / Happy birthday to Me!』が12月21日にリリース決定。新メンバー櫻井梨央が加入して初の作品であり、12月10日に卒業することを発表している加賀楓にとってはラストシングルとなる。

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