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大前粟生/著『チワワ・シンドローム』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

傷ついた私は、弱さを利用してもいいですか?

『チワワ・シンドローム』
大前粟生/著 ¥1650 文藝春秋


ある日、800人以上の人に勝手に"チワワのピンバッジ"が付けられていた。SNSで〈チワワテロ〉と呼ばれたこの騒動は、やがて主人公の親友や恋愛相手を巻き込み、不穏な事件へとつながっていく。時代の最先端を行く新感覚ミステリー。

 ギラギラな表紙がインパクト大なこの本。普通の会社員・琴美とその親友である人気インフルエンサー・ミアが、ある事件を解決していく物語なんですが、SNSの炎上や果ては迷惑系YouTuberまで登場する、イマドキの舞台設定にワクワク!
 作者の大前粟生さんは「今の若者たちの弱さとやさしさ」を丁寧に描き続けて絶大な支持を得てきた人。今回の作品ではさらに突き詰め、『炎上するような強者になるのは嫌だから、チワワのように愛される無力な弱者になりたいと願う人たち』の姿を描いています。
 次々に起きる事件と新たな謎、続きが気になりすぎる展開でぐいぐい読めてしまうのだけど、読み終えると「弱さってなんだろう」「やさしさってなんだろう」と心の中で自分がごまかしていた部分をえぐり出されているような気持ちに……。でも新たな自分に出会えそうな、オススメの1冊です!

 

『結婚とわたし』
山内マリコ/著 ¥924 ちくま文庫


2013年から2017年にかけて著者がしたためた、同棲から結婚に至るまでの日記に、彼氏(現・夫)からのコメント、そして後日談を加筆したエッセイ。家事分担や日々の不平不満はどう解決していく? 家庭内男女平等を目指して、いざ話し合い!

『落雷はすべてキス』
最果タヒ/著 ¥1430 新潮社


詩の映画化や個展、街とのコラボなど、常識とジャンルを超えて人気を博す詩人・最果タヒの最新詩集。言葉にならない思いをすくい取ったような言葉の数々は、世界を、いつもの朝を、何げない日常の風景を、少し美しく見せてくれるはず。

『肉体のジェンダーを笑うな』
山崎ナオコーラ/著 ¥726 集英社文庫


医療の進歩で男性でも母乳が出せるようになった世界、機械を装着することで男女の筋力差がなくなった場合、PMSが訪れる男性……と、圧倒的な想像力で、性差のない未来をユーモラスに描いた全4編。性別による"当たり前"が覆る1冊。


はなだ ななこ 
東京・高円寺の書店「蟹ブックス」店長。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』『モヤ対談』が好評発売中。

2024年5月号掲載

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