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フィギュアスケート
2022.10.30更新日:2022.12.20
初公開日:2019年11月1日
1999年8月9日生まれ、ラトビア出身。 身長176cm。趣味はテレビゲーム、歴史、絵を描くこと、読書、料理。ステファン・ランビエールコーチのもとで得意の芸術的スピンを磨いてきた23歳。オリンピック二大会連続出場、最高位は13位。2018年世界選手権6位、2022年欧州選手権では3位に入り、ラトビア男子にISU選手権初のメダルをもたらした。感性が豊かで、その目に映るありとあらゆるものに愛を傾ける人。音楽表現に長け、観客を引き込む名手。愛称はラトデニ。
かつてはロシアのコーチのもとで練習を積んでいたが、2016年より、2006年のトリノオリンピック銀メダリスト、ステファン・ランビエールの門下生に。当時からスピンには定評があったが、”スピンの貴公子”と呼ばれたランビエールコーチの指導でさらに磨きをかけ、座った姿勢で高速で回転する”シットスピン”は彼の代名詞に。以前はランビエールコーチの自宅で下宿生活を送っていたこともあり、リンク以外でも仲のよさそうな姿を披露している。
同じくスイスのシャンペリーで練習を積む島田高志郎選手とは大親友で、お互い刺激を受け合いながら切磋琢磨中。
2019年より新たにチームメイトになった宇野昌磨選手との練習は、デニスにとってモチベーションになっているとのこと。二人の間にはまだ言葉の壁があるものの、一緒にゲームなどを楽しみながらシャンペリーでの生活を送っている模様。
▶ステファン・ランビエールのプロフィールを見る▶島田高志郎のプロフィールを見る▶宇野昌磨のプロフィールを見る
スケート以外にも多彩な才能をもつデニス。趣味は料理で、リンクメイトに手の込んだメニューをふるまうことも。特にケーキはランビエールコーチも大絶賛するほどの腕前。クリスマスには、お手製のパイのレシピを公開し、ファンを喜ばせてくれていた。
アイスショーで来日することが多いデニスは、日本文化にも興味津々。宮本武蔵や寺社、城や鎧など日本の歴史に興味があるそうで、練習に現代風の陣羽織姿で登場したことも。ちなみにその陣羽織は京都のファッションブランド「SOU・SOU」のもので、同ブランドのシャツも私服として愛用中。また、2018-2019シーズンのフリー『ラストサムライ』の衣装は、合戦時の武士をイメージしたものとなっている。学業にも熱心に取り組み、今年6月には大学で教育学学士号を取得。練習で忙しい合間にも哲学書を読むなど、日々教養を深めている。
空いた時間にはよくシャンペリーの村を散歩をするというデニス。地域の広報誌によると、散策中に村の老婦人の家でお茶をごちそうになったり、落ち葉拾いを手伝ったりすることもあるそうで、スイスでのアットホームな暮らしを楽しんでいる。そのほかにも山に登ったり、植物を育てたりと、シャンペリーの豊かな自然を満喫している。
総合成績6位と一躍脚光を浴びた2018年の世界選手権では、中世ヨーロッパ風の衣装もあいまって、会場中が”リアル王子様”の登場に沸いた。まだまだ競技人口の少ないラトビアで、デニスの活躍が人々にとってフィギュアスケートに興味をもつきっかけになっている。 2018-2019シーズンには本番で思うような結果が残せなかったが、2019-2020シーズンは徐々にジャンプの安定感が増し、初戦のネペラメモリアル杯で3位、グランプリシリーズのスケートカナダでは5位に入り、自己最高位を更新した。欧州選手権を6位で終え、世界選手権に向け準備を進めたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大会は中止に。翌2020-2021シーズンも次々と大会がキャンセルとなり、出場できた試合はわずか2試合となった。しかし地道に4回転ジャンプの練習に励み、チャレンジャーシリーズネーベルホルン杯のフリーでは、4回転サルコーをISU公認大会で自身初成功。ショート5位からパーソナルベストを更新しての逆転優勝を決めた。
4回転サルコーの成功はもちろん、シニアでチャレンジャーシリーズ初となる金メダルを獲得した記念すべき大会となった。
デニスにとっての2度目となるオリンピックシーズン。グランプリシリーズではフリーで4回転サルコーに挑戦。惜しくも成功とはならなかったが、こだわりのスピンステップでは常に最高のレベル4を揃え、二大会とも表彰台まであと一歩の4位と着実な進化を見せた。年が明け、オリンピックを前に欧州選手権に出場。ショートはこのシーズン安定したノーミスの演技が続いており、6位発進。
2日後、逆転の表彰台を狙い挑んだフリー。冒頭でこれまで挑み続けてきた4回転サルコーを見事着氷。その後も『ロミオとジュリエット』の曲にのせ、次々とジャンプに成功。その姿に観客は沸き立ち、リンクを包む空気が徐々に熱を帯びていく。
その熱気をエネルギーに、演技はさらに自由に、クライマックスに向け力強さを増し、ラストはロミオの慟哭をぶつけるかのようなフィニッシュ。心を震わせる演技に客席はスタンディングオベーション、リンクサイドで愛弟子を見守っていたランビエールコーチは、歓喜のあまり頭を抱え大興奮。演技から戻ったデニスを万感の思いで抱きしめた。キス&クライでもデニスの手を握り離すことなく、今か今かと得点を待つ二人。場内に181.84点の得点がアナウンスされ、暫定1位の表示が出ると、握りしめた手にさらに力を込め、この素晴らしい瞬間を共に分かち合った。
結果はショート、フリーともに自己ベストを更新し、総合272.08点で3位。4回転サルコーは1/4回転不足の判定とはなったものの、6回目の出場でついに表彰台に。ラトビア男子にISU選手権初となるメダルをもたらした。
その勢いのまま、翌月には北京オリンピックに出場。
4回転ジャンプ成功とはならなかったが、長年磨き上げた美しいスピンに、情感たっぷりのスケーティングを披露。前回のオリンピックから確実な成長を見せ、13位に。
続く世界選手権でも前回から順位を上げ、13位でこの特別なシーズンを締めくくった。
シーズン序盤のグランプリシリーズイタリア大会後には、「4回転ジャンプを習得できなかったら今シーズンでやめようと自分に誓っていたが、フリーの公式練習と6分間練習で4回転サルコーを着氷することができ、続けることができると自信がついた」と語っていたデニス。欧州選手権での成功と、その成果をもってつかみ取った銅メダルが大きな自信となり、次のシーズンのさらなる飛躍を後押ししてくれることだろう。
SP:Englishman in New York
FS:交響曲第9番 『新世界』よりショートはイギリスが生んだ世界的ロックスター、スティングの代表作「Englishman in New York」。タイトル通りニューヨークで暮らす英国人の思いを歌い上げた曲で、“Be yourself no matter what they say(人がなんと言おうと自分らしくあれ)”というメッセージが込められている。
振付を手掛けたのはランビエールコーチと長年タッグを組むサロメ・ブルナーで、プログラムにはデニスの意見も多く取り入れられているとのこと。哀愁漂うサックスが印象的な曲だが、ジャジーなメロディに合わせ、小粋なステップで歌うように自由に滑る姿は幸福感さえ感じられ、日々さまざまなものを吸収し、人生を豊かにすることが得意なデニスそのものを体現しているかのよう。またリンクに鳴り響くドラムを合図に始まる、ドラマティックなステップも見どころの一つ。一方フリーは作曲家アントニン・ドヴォルザークの『新世界より』。40分以上に及ぶ4つの楽章からなり、ボヘミアを離れアメリカで音楽院の院長を務めることになったドヴォルザークが、新世界アメリカから祖国を思い書いた交響曲。
デニスが長年滑りたかったプログラムで、振付を務めたのはランビエールコーチ。クラシックの王道ともいえる壮大なスケールの楽曲を重厚感のあるスケーティングで表現している。今シーズンはフリーはもちろん、ショートにも4回転サルコーを取り入れ、技術、芸術双方でアップデートした演技を披露する。
【2021-2022シーズン】SP:Sarakiz: II. Romanza 、『もののけ姫』より「The Battle Drums」
FS:『ロミオとジュリエット』
前シーズンからフリーを継続し、ショートは新たなプログラムを用意。
前半はヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲で、ロマンティックな曲調がしっとり優美なスケーティングと見事に調和。後半は映画『もののけ姫』から「The Battle Drums」を使用。猪たちが人間との戦いへと向かうシーンで打ち鳴らされる太鼓の音にのせてリズミカルに躍動。一つ一つの音を捉えながら、大胆に力強く舞うステップシークエンスは迫力もの。
『ロミオとジュリエット』は、2020年のネーベルホルン杯で4回転サルコーを初成功させ、パーソナルベストをたたき出した自信作。フィギュアスケートの定番でもあり、ランビエールコーチも以前エキシビションで滑ったことのあるプログラム。ランビエールコーチはニーノ・ロータの映画音楽を使用したが、デニスはセルゲイ・プロコフィエフが作曲したバレエ音楽を使用。ロックダウン中はバレエに精力的に取り組み、美しいポジションや魅せ方を研究。彼の若々しさとエレガントな雰囲気が物語のロミオ像と重なり、プログラムのドラマティックな展開に思わず引き込まれる。クライマックスの感情を爆発させるようなコレオシークエンスは、今シーズンも多くの人を魅了するだろう。
▶レジェンドプログラム『ロミオとジュリエット』
【2020-2021シーズン】
SP:ル・グラン・タンゴ
ショート、フリーともにランビエールコーチが振付を担当。
ショートはタンゴに挑戦。ラトビア出身のヴァイオリニストによる演奏で、愛国心の強いプログラムとなっているとのこと。前衛的な衣装で新境地を披露してくれる。フリー『ロミオとジュリエット』については、2021-2022シーズンのプログラム参照。
【2019-2020シーズン】SP:Two Men in Love(The Irrepressibles)
Bloodstream
FS: Lotus Feet(Steve Vai)
ショートの「Two Men in Love」は背中が透けた、今までにないセクシーな衣装。フリーは打って変わって王子様のような衣装でそのギャップに注目! 公式戦での4回転ジャンプの成功にも期待が掛かる。
▷Instagram:@denissvasiljevs
▷Twitter:@DenissVasiljevs
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写真/アフロ 取材・文/轟木愛美 Web構成/内山英理
「氷上のアーティスト」と呼ばれるスイスのステファン・ランビエール。 輝かしい現役生活から引退後は、アイスショーで大活躍。 現在はショー出演のかたわら、後世の育成にも情熱を傾けている。 男女問わず日本のスケーターたちとの関わりも深く、母国スイスにて島田高志郎、宇野昌磨らを指導。 モデルのようなルックスで、イケメンコーチとしても話題のステファンの、現役時代からこれまでの軌跡を美しい写真とともにプレイバック。
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