そしてついに幕を開けた勝負のシーズン。
オリンピックのテスト大会も兼ねたアジアンオープントロフィーに出場するも、大会を前に虫垂炎にかかり、体重は5kgも減ってしまった。体調が万全でないなか、ジャンプミスが続き優勝は逃してしまったが、オリンピックと同じでリンクで滑ったことで、4か月後に控えた本番のイメージができたに違いない。
今シーズンのグランプリシリーズは1戦のみの出場。コロナの影響により中止となった中国杯の代替地として開催されたイタリアでの試合となった。
回復具合が心配されたが、ショートでは本来の美しい4回転ジャンプを披露。映画『グリーン・デスティニー』の情景が浮かび上がるような演技で首位に立った。
フリーではやはりまだ本調子ではないのか、ジャンプが決まらず、大きく順位を落としてしまい7位に。
その後、1枠を巡る国内での熾烈な代表争いを経て、ついにオリンピック代表の座を獲得。
いよいよボーヤンの2度目のオリンピックが愛する母国で幕を開ける。
ジュニア時代から複数の4回転ジャンプを操り、4回転ジャンプの申し子としてデビューしたボーヤン。それゆえに、ジャンプがなかなか決まらない時期には周囲の想像を超える苦悩があったはずだ。
しかしそんなイメージを払拭するように、近年は表現面でも努力を重ね、ジャンプだけでない、成熟したスケーターへと進化を遂げている。
そしてボーヤンの魅力を語る上で忘れてはならないのが、ジャンプのエッジの正確さ。高難度の4回転ルッツジャンパーが増えた現在においても、彼のルッツジャンプの完成度は別格で、多くのスケーターのお手本とされている。
中国の男子シングルのエースとして、どこまでも誠実に、ひたむきにスケートと向き合ってきた4年間。
積み重ねてきた努力は決して裏切らない。
自国開催という大きなプレッシャーに打ち勝ち、堂々とした演技でその手に栄光を掴み取ってくれることを世界中が楽しみに待っている。